八王子市立山田小学校4年生
 「触ってみよう!見ないで分かる身近なお金」他

 4年生3クラスに一時間ずつそれぞれ授業をさせていただきました。
全てのクラスの様子は書き切れないので、1時間の授業の流れに3クラス分まとめてお伝えします。

黒板をバックに話をしている様子
先生にご紹介いただき、まずは、名前とどこから来たか、今日はみんなとどんなことをしようと考えているかをお話ししました。
まず最初に、授業に入る前にと前置きをして、子供たちに一つお願いをしました。

「今からみんなと一緒にゲームやったり、お話ししようと思ってるんだけど、私はみんなの顔が見えません。
だから、私がみんなに質問したり、問いかけたときは、ちゃんと言葉で教えてくださいね。
分かったときは、分かった~、分からないときは分からない~、言葉で伝えてくれたら見えなくても分かるからね。
今の話、分かりましたか?」
と訊くとちゃんと
「はい!!」
と答えてくれた子供たちです。

さて、本題へ。
まずは私の自己紹介。
どこに住んでいて、今日はここまでどうやって来たかを話しました。
そして、私の毎日の生活を朝から順番に説明しました。
そこで、家族のことも少し紹介。

自己紹介をしているところ
生活の流れを話したところで
「じゃぁ、ここで、みんなに考えてもらいたいことがあります。『目が見えないと、どんなことに困ると思う』」

私の生活の具体的な様子を聞いて、目が見えなかったら「これはどうするの?」「あれはどうするの?」そんなことが思い浮かんでくれていたらいいなぁと思い、この質問をしました。

「こんなこと聞いちゃ失礼かな、とか思わなくていいからね。なんでも疑問に思ったこと聞いてね」
と伝えておきました。

しばらく隣の友達と相談して、手を上げてもらうと…。
上がる上がる!

いくつか上がった質問をご紹介。
このとき、子供たちから聞いた質問を必ず繰り返すようにしました。

1 「目が見えないと、どうやって服を着るんですか?」
これは、服を「選ぶ」ではなく「どうやって着る」かという質問でした。

答え。
自分の服を触りながら
「たとえばジャケットなら前にボタンがあるよね。
Tシャツなら首のところにタグが付いてるよね。見なくても、触れば分かる目印ってあるんじゃない?」
と答えました。

「目が見えないから間違えるとは限らないし、見えてても服の前後ろを間違えることってない?」
と聞くと、先生が
「体育で着替えるとき、先生に『体操服反対』って言われて直してる子いるよね」
と言われ、みんな笑いと納得の声。

2 「目が見えなくてどうやってご飯作るんですか?指切ったりしませんか?」
答え。
たとえば包丁を例に話をしたのですが、目が見えなくても正しく包丁を使えば指を切ることはそうはない。
「ちゃんと包丁の柄の部分を持って、反対側の手でしっかり食材を押さえる。
押さえている方の手は切らないように気お付けて、包丁を動かすと…目が見えなくてもそう簡単に手は切れないよ」
と答えました。

これには先生が感心してたのが印象的でした。

3 「目が見えないとどうやって字を書くんですか?」
答え。
「目が見えなくて字を書く方法は三つあります!」
と言うと、またうまい具合に先生が
「はい、三つ!三つね」
とフォローしてくれました。

一つ目はパソコンを使うこと。
ここで、音声で読み上げるパソコンの紹介をしました。
特別なパソコンを使っていると思われがちですが、使うのは普通のパソコン。
そこに音声読み上げソフトを入れて使っていることを伝えました。

二つ目。
携帯を使うこと。
「みんな、しゃべる携帯って見たことある?」
と聞くと
「ある!盲導犬の人が見せてくれた」
という答え。
その方が見せたのは、ガラケイだと聞いていました。
「じゃぁ、これ見たことあるかな?ジャ~ン!」
と取り出したiPhone6。

授業の中でこれが一番盛り上がりました。
「わぁ、すごい!スマホじゃん!」
仲には
「iPhone6だ!」
といってる子もいました。

ここで、少しiPhoneの実演をしました。
「フェイスブック知ってるかな?」
と聞くと
「知ってる!」
と。

子供たちに画面を見せながら、アイコンが並んでいるところを触って、フェイスブックのところをタップ。
開いた画面を見て、みんな
「すごい!」
とびっくりしていました。

このとき、読み上げの速度が速いことも話題になりました。
私はこの速さが一番聞き取りやすいこと、速度調整も出来ることを説明しました。
iPhoneはどれを買っても、もともとしゃべる機能が入っていることを伝えました。

さて、字を書く方法、三つ目!
「誰かにお願いして書いてもらうこと」
娘の保育園のお手紙を例に出して、その様子を説明しました。
どうしても、直接紙に字を書かないといけないことはあります。
でも、自分では難しい。そういうときは、目が見える人にお願いして書いてもらっていることを伝えました。

4 「目が見えないとどうやってじゃんけんするんですか?」
最後に選んだのはちょっと面白い質問です。
「じゃぁ、誰か出てきてジャンケンしようよ!」
と言うと、先生がうまくフォローしてくださって、一人前に出てきてくれました。
「やってみよう、最初はグー!じゃんけんポン!…これじゃ、分からないよね」
そこで、どうするか。
「じゃあさ、グー・チョキ・パー、これを言葉で言ってみたらどうかな?」と提案し、再びジャンケン。
「最初はグー、ジャンケン…パー!」
お互い手と同時に言葉でも伝えると…。
「はい、私の負け。どう?こうすると、目が見えなくてもジャンケンできるよね」



ここで、質問コーナーは終了。

私の自己紹介、みんなからの質問で、少し空気がなじんだかなと思うところで、ワークショップです。

「触ってみよう!見ないで分かる、身近なお金」

「お買い物するときに絶対使う大切なものって何?」
と聞くと
「お金!」
「そうだよね。お金だよね。見えないと、お金どうやって分かるかな?」
と聞いてみました。
「今からそれをみんなにやってもらおうと思います」
そこでルールを説明しました。

まずクラスを六つの班に分けます。
それぞれに一つずつ、両側から手が入れられる中身の見えない箱を置きます。
その中に入った小銭を触って当てるというもの。
「ヒントは、すべてのお金に触って分かる特徴があるってこと。もし、触ってて分からなくなったら、前に見本を置いてあるから、触りに来ていいよ」
と言って、スタート!
箱に手を入れている女の子の後ろ姿
みんな、賢い。
自然と
「500円が一番大きいよ」
「5円の周りにはギザギザがないよ」
など声が上がり始めました。
まさに私が予想していた通り、みんな触ってお金の特徴を掴んでいました。

見本を触ったり、テーブルの上に落として
「音が違う」
と言ってる子もいました。

ある程度時間がきたところで、終了!
答えを発表してもらい、先生に板書していただき、私が箱の中からお金を出して正解を言う。
「正解は・・・240円でした!」
「イエ~イ!」

と盛り上がる一幕もありました。
全ての答え合わせが終わり、さてここからはちょっとまじめなお話し。

町で目が見えない人と出会ったらどうすればいいか、実際先生に私の白杖を持っていただきました。

隣に立った私は、いきなり白杖を持って引っ張り
「これ、どうかな?」
と聞いてみると、みんなは
「だめ~!危ない!」
と。

「そうだよね。目が見えない人にとって、白杖は目の代り。
いきなりこうやって引っ張られたら、怖いしびっくりしちゃうよね。じゃぁ、どうすればいいと思う?」
と聞くと
「肘を持ってもらう」
という答え。素晴らしいですね。

そこで、私はどうしてもらいたいかを伝えました。
まず、軽く肩に触れ
「お手伝いしましょうか?」
と声をかけてもらいたいこと。
肘を持たせてもらうか、肩を持たせてもらうか、これは人に寄って違うことを伝えました。

そして、最後に絵本の朗読をさせてもらいました。
森絵都作「ぼくだけのこと」を読みました。

「みんな、普段絵本って絵を見てるよね?でも、今日はお話を聞くってことに集中してみて。
本って、耳でも楽しめるんだよ」
そう言って読み始めました。
話の内容に合わせて、途中で笑いが起きることもあって、真剣に聞いてくれていることが伝わってきました。

45分の授業、まだまだ工夫するところはたくさんあるなと思いましたが、
先生のサポートのおかげで、楽しく進めることが出来ました。
「当日の私の気づきを書いたブログはこちら」です。
ブログはまた違う雰囲気になっているので、お読みいただけると嬉しいです。

「先生方・子供たちからの感想はこちら」
山田小学校4年生のみんな、先生方、ありがとうございました。