TBS 新入社員研修

 4月25日。
NPO法人「メディア・アクセス・サポートセンター(以下MASC)」さんから声をかけていただき、TBSの新入社員研修のゲスト講師の一人として参加させていただきました。
MASCの方が3名と、視覚障害の当事者が二人です。
ご一緒させていただいたのは、NPO法人「モンキーマジック」代表の小林幸一郎さんです。
小林さんは、視覚障害クライミングの世界チャンピオン!
NPO立ち上げ当初からお名前は伺っていて、いつかお話しさせていただきたいなと思っていました。
今回研修までの待ち時間にクライミングのことや中途で視覚障害になられたときのことを色々と聞かせていただきました。
さて、研修は32人の新入社員の方々とスタートしました。

「日本語字幕について」

まずは、MASCの方が聴覚障害者むけの「日本語字幕」について紹介しました。
日本語字幕とは、作品の中に出てくる音の情報を文字にして表しているものです。
まさに、音を頼りに映像を楽しんでいる私とは真逆ということになります。
この活動にかかわるようになるまでは「日本語字幕」と聞いて、台詞だけを文字に書き起こしているのだと思っていました。
でも、実際に見てみると台詞いがいにも音の情報がたくさん文字になっています。
たとえば、サイレンの音や、BGMは♪で表現していたりなど。
そういったところも、みなさん新鮮だったようです。

MASC蒔苗さんの説明を聞く新入社員の方々

「視覚障害について知ろう」

視覚障害と言っても、見え方や見えなくなった時期でその人の持つ感覚は全く違うという話をしました。
私と小林さんで、みなさんからの質問に答えていきました。
いくつかご紹介します。
「点字を習得するにはどれぐらい時間がかかりますか?」
というもの。 これには、私は小さいころから目が見えず、盲学校で点字を習ってきたことをお話ししました。
みなさんが学校で文字を習うように、小さいころから点字と親しんできました。
普通の文字でも覚えるのに個人差があるように、点字もそれと同じだということを話しました。

視覚障害について皆さんにお話をする管理人

続いて、小林さんは中途失明で全く点字が読めないということをお話しされていました。
視覚障碍者と言っても、全員が点字を読めるわけではないということを伝えました。
他には
「目が見えないなら、テレビよりラジオの方がいいのでは?」
というもの。
これには、私も小林さんも同じような意見でした。
テレビとラジオでは、提供している物が全く違う。
私が好きなドラマはテレビでしか見られないし、小林さんはテレビではニュースを見ているとのことでした。

「音声ガイド体験」

全員アイマスクを付けて映画のワンシーンを観ました。

参加者が全員アイマスクをつけて映画を観ている様子

その後、どういうシーンだったかをみんなで話し合い、自己紹介とともに全員発表してもらいました。
「作品の中の音に集中して、何とかイメージしようとしたけど、あまり分からなかった」
「無音のシーンがとても長く感じた」
「(音から)森の中にいるのかなと思った」
などなど、様々な答えが集まりました。
その後、音声ガイドを付けて観ました。
私も含め、ガイドがないと全く分からなかった場面がいくつかあり、驚いたり感心したりという声が聞こえました。

「音声ガイド製作体験」

TBSで放送された「弁護士のくず」を題材に、音声ガイドの製作体験をしました。
2分ほどのシーンを見て、チームごとに音声ガイドを書きます。
アイマスクをして音声ガイドを聞いたチームは、それを再現ドラマとして発表します。
ガイドを書いた方は、自分たちのガイドがちゃんと伝わっていたのかということを、再現ドラマを見ることで確認できるわけです。
この企画、すごく面白かったです。
みなさんさすが、のりがよくって、演じ切っていました。

「最後に」

講師の松田高加子さんが話したことがとても印象に残りました。
映像作品に音声ガイドや日本語字幕を入れることは、社会貢献ではないということ。
それらを必要としている人への一つのサービスだということ。
「障害者のために特別なことをする」のではなくて「みんなが楽しめる一つの方法」として、音声ガイドや日本語字幕をとらえてほしいというメッセージでした。

松田さんが皆さんにお話をしている様子

今後テレビに関わるみなさんに、ぜひ「目が見えなくてもテレビを楽しんでいる人たちがいる」ということを心の中に置いて、映像の世界でがんばってもらいたいなと思いました。
貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。
「メディア・アクセス・サポートセンター」ホームページ
「NPO法人モンキーマジック」ホームページ